期待高まる太陽光発電 温暖化対策に不可欠−−福田ビジョンで注目
地球環境問題が大きな議題となった「北海道洞爺湖サミット」の議長を務めた福田康夫前首相が打ち出した「福田ビジョン」。2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を最大で80%削減するという意欲的な温暖化対策だが、目を引いたのが太陽光発電の普及・促進だ。05年度に打ち切った国の個人向け補助金を復活させ、3〜5年後には発電システムの価格を半額にし、30年には現在の40倍の導入量にする目標を設定した。次世代エネルギーとして、低炭素社会への移行に欠かせない太陽光発電の現状について、特集する。
◇膨大な光エネルギー 有害物質出ず、どこでも可能
巨大な風車で発電する風力や、発電時に水しか出さない燃料電池の原料となる水素など、さまざまな種類がある次世代エネルギー。その中で、太陽光発電が優位に立つのは電気の得やすさだ。
変換するエネルギーは太陽から地球に降り注いでいる光エネルギーだ。その量は、人類が必要としているそれの数十倍という膨大なものだ。また、発電時にCO2などの温室効果ガスや有害物質を出さないばかりでなく、光が届くところならどこでも発電可能で、都市部から山間部や海上など場所を選ばないメリットがある。
太陽光発電に使う太陽電池は動力などを使わず、光エネルギーを直接、電気エネルギーに変えることから理論上のエネルギーロスは少なく、設備もコンパクトで寿命も長い。発電量も太陽電池を増減するだけで、比較的自由に設定できる。現在、普及が進んでいるのは、05年に日本を抜いて世界一の発電量となったドイツなど先進国が多いが、今後は社会資本の整備が進んでいない新興国の普及も期待されている。国内でも、関西電力(大阪市)などが堺市に建設を計画している2万8000キロワットもの巨大な発電施設から卓上用の電子計算機までさまざまな用途に用いられている。
一般的な太陽電池の仕組みは、電気的な性質の異なる半導体を合わせたもので、光エネルギーを受けると、マイナスの電気が一方のシリコンに、プラスの電気がもう一方のシリコンに集まり、そこで起きた電流を電気エネルギーとして取り出す。太陽光発電の弱点であるエネルギーの変換効率も、発明当初の数%から20%以上に向上した。
◇広がる公的助成 国の実施時期は未定、都道府県は独自に
普及の障害となっているものに、システム全体の価格がある。一般的な住宅に設置される3キロワットの太陽光発電システムの総額は250万円ほどで、耐用年数は20年以上とされる。地域や設置場所によって差はあるが、おおむね年間3500キロワットの発電量が見込める。平均的な世帯の消費電力は賄え、余った電力は契約する電力会社に売ることができるなどの金銭的なメリットもあるが、償却するには耐用年数と同程度かかるとされ、安価とは言い切れない。そのため、公的な助成制度を活用するのが賢い購入方法だ。
経済産業省が公表している住宅用太陽光発電システムへの補助金の総額は90億円。一定の要件を満たすと、1キロワットあたり7万円の補助金が得られ、約3万5000戸が対象になる見通しだ。
国の制度の実施時期は未定だが、都道府県では独自に補助金を実施しているところもある。100万キロワット相当の太陽エネルギーの利用拡大を掲げている東京都では住宅用について、09年度から2年間、3キロワットで30万円程度と国よりも多い補助金を支給。太陽光発電を含む太陽エネルギー利用機器を4万世帯に導入する方針だ。
また、福島県(1キロワットあたり最大3万円)や和歌山県(同2万5000円)、佐賀県(同1万5000円)なども住宅向けの補助金制度を設けている。市町村では、広島県呉市が97年度、長野市が99年度、北海道帯広市が00年度から補助金を支給するなど、全国309の自治体(「新エネルギー財団」調べ)に広がっている。
現在、太陽光発電で余った電気を電力会社に売る契約をしている件数は、42万8000件あまりで、助成制度の充実などでさらに増えることが予想される。
◇幼稚園・保育園、教材に
◇環境負荷軽い、太陽電池使用 「そらべあ基金」が贈る
現在、太陽電池で主力となっているのは、シリコンを使った商品だ。最初に実用化されたのもシリコンの単結晶で作ったもので、性能や信頼性に優れている。原料であるケイ素は自然界に大量にあるところも他の次世代エネルギーと比べても優位な点だ。一方で、製造段階で珪砂(けいしゃ)などの原料からケイ素を取り出すには大量のエネルギーが必要で、価格が高くなるのが課題となっていた。
独自の太陽電池を開発しているホンダソルテック(熊本県大津町)は、シリコンを使わず、製造時にも環境にやさしい太陽電池を商品化した。「CIGS薄膜太陽電池」と呼ばれ、CIGSは銅(copper)、インジウム(indium)、ガリウム(gallium)、セレン(Selenium)の略で、四つの化合物を原料に発電層を薄い膜状の半導体にした。07年10月に一般住宅向けの販売を始め、今年10月からは大容量発電が可能な公共・産業用向けにも販売を開始した。
発電層の厚さは従来型の80分の1程度で、製造時のエネルギーは1年弱で相殺される計算だ。製造時のエネルギーの回収に必要な時間を「エネルギーペイバックタイム」と呼ばれ、太陽電池は従来型でも2年程度。それがさらに短縮され、製造時も環境への負荷が軽減する。
次代を担う子供たちへの環境教育の一環として、この最も進んだ太陽電池を使った太陽光発電システムを「そらべあ発電所」として幼稚園や保育園に贈ろうというプロジェクトがある。地球温暖化防止のため、グリーン電力の普及啓発などを行っているNPO法人「そらべあ基金」が手掛ける「そらべあスマイルプロジェクト」だ。
ホッキョクグマ兄弟のキャラクター「そらべあ」をシンボルに、活動している同基金。今年はソニー(東京都港区)が乾電池の売り上げの一部などを充てて、全国3カ所の幼稚園・保育園に3キロワットの「CIGS薄膜太陽電池」を使った「そらべあ発電所」が設置された。設置園の一つである東江幼稚園(東京都葛飾区)の浅井正信園長は「設置した棟の電気はほぼ賄っている。発電量がひと目で分かる画面を園児に見せるなど環境教育にも活用している」と話している。
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☆住宅用太陽光発電システムの助成制度(抜粋)☆
福島県 助成制度がある市町村の住民に1キロワットあたり最大3万円(上限4キロワット)
東京都 3キロワットで30万円程度(09年度から)
和歌山県 1キロワットあたり2万5000円(上限5キロワット)
佐賀県 同1万5000円(同4キロワット)
北海道帯広市 設置費用の2分の1(同15万円)
長野市 1キロワットあたり3万円(同20万円)
松山市 同8万円(同5キロワット)など
広島県呉市 同2万円(同4キロワット)
鹿児島市 同4万5000円(同3キロワット)
毎日新聞 2008年12月17日 東京朝刊
地球環境問題が大きな議題となった「北海道洞爺湖サミット」の議長を務めた福田康夫前首相が打ち出した「福田ビジョン」。2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を最大で80%削減するという意欲的な温暖化対策だが、目を引いたのが太陽光発電の普及・促進だ。05年度に打ち切った国の個人向け補助金を復活させ、3〜5年後には発電システムの価格を半額にし、30年には現在の40倍の導入量にする目標を設定した。次世代エネルギーとして、低炭素社会への移行に欠かせない太陽光発電の現状について、特集する。
◇膨大な光エネルギー 有害物質出ず、どこでも可能
巨大な風車で発電する風力や、発電時に水しか出さない燃料電池の原料となる水素など、さまざまな種類がある次世代エネルギー。その中で、太陽光発電が優位に立つのは電気の得やすさだ。
変換するエネルギーは太陽から地球に降り注いでいる光エネルギーだ。その量は、人類が必要としているそれの数十倍という膨大なものだ。また、発電時にCO2などの温室効果ガスや有害物質を出さないばかりでなく、光が届くところならどこでも発電可能で、都市部から山間部や海上など場所を選ばないメリットがある。
太陽光発電に使う太陽電池は動力などを使わず、光エネルギーを直接、電気エネルギーに変えることから理論上のエネルギーロスは少なく、設備もコンパクトで寿命も長い。発電量も太陽電池を増減するだけで、比較的自由に設定できる。現在、普及が進んでいるのは、05年に日本を抜いて世界一の発電量となったドイツなど先進国が多いが、今後は社会資本の整備が進んでいない新興国の普及も期待されている。国内でも、関西電力(大阪市)などが堺市に建設を計画している2万8000キロワットもの巨大な発電施設から卓上用の電子計算機までさまざまな用途に用いられている。
一般的な太陽電池の仕組みは、電気的な性質の異なる半導体を合わせたもので、光エネルギーを受けると、マイナスの電気が一方のシリコンに、プラスの電気がもう一方のシリコンに集まり、そこで起きた電流を電気エネルギーとして取り出す。太陽光発電の弱点であるエネルギーの変換効率も、発明当初の数%から20%以上に向上した。
◇広がる公的助成 国の実施時期は未定、都道府県は独自に
普及の障害となっているものに、システム全体の価格がある。一般的な住宅に設置される3キロワットの太陽光発電システムの総額は250万円ほどで、耐用年数は20年以上とされる。地域や設置場所によって差はあるが、おおむね年間3500キロワットの発電量が見込める。平均的な世帯の消費電力は賄え、余った電力は契約する電力会社に売ることができるなどの金銭的なメリットもあるが、償却するには耐用年数と同程度かかるとされ、安価とは言い切れない。そのため、公的な助成制度を活用するのが賢い購入方法だ。
経済産業省が公表している住宅用太陽光発電システムへの補助金の総額は90億円。一定の要件を満たすと、1キロワットあたり7万円の補助金が得られ、約3万5000戸が対象になる見通しだ。
国の制度の実施時期は未定だが、都道府県では独自に補助金を実施しているところもある。100万キロワット相当の太陽エネルギーの利用拡大を掲げている東京都では住宅用について、09年度から2年間、3キロワットで30万円程度と国よりも多い補助金を支給。太陽光発電を含む太陽エネルギー利用機器を4万世帯に導入する方針だ。
また、福島県(1キロワットあたり最大3万円)や和歌山県(同2万5000円)、佐賀県(同1万5000円)なども住宅向けの補助金制度を設けている。市町村では、広島県呉市が97年度、長野市が99年度、北海道帯広市が00年度から補助金を支給するなど、全国309の自治体(「新エネルギー財団」調べ)に広がっている。
現在、太陽光発電で余った電気を電力会社に売る契約をしている件数は、42万8000件あまりで、助成制度の充実などでさらに増えることが予想される。
◇幼稚園・保育園、教材に
◇環境負荷軽い、太陽電池使用 「そらべあ基金」が贈る
現在、太陽電池で主力となっているのは、シリコンを使った商品だ。最初に実用化されたのもシリコンの単結晶で作ったもので、性能や信頼性に優れている。原料であるケイ素は自然界に大量にあるところも他の次世代エネルギーと比べても優位な点だ。一方で、製造段階で珪砂(けいしゃ)などの原料からケイ素を取り出すには大量のエネルギーが必要で、価格が高くなるのが課題となっていた。
独自の太陽電池を開発しているホンダソルテック(熊本県大津町)は、シリコンを使わず、製造時にも環境にやさしい太陽電池を商品化した。「CIGS薄膜太陽電池」と呼ばれ、CIGSは銅(copper)、インジウム(indium)、ガリウム(gallium)、セレン(Selenium)の略で、四つの化合物を原料に発電層を薄い膜状の半導体にした。07年10月に一般住宅向けの販売を始め、今年10月からは大容量発電が可能な公共・産業用向けにも販売を開始した。
発電層の厚さは従来型の80分の1程度で、製造時のエネルギーは1年弱で相殺される計算だ。製造時のエネルギーの回収に必要な時間を「エネルギーペイバックタイム」と呼ばれ、太陽電池は従来型でも2年程度。それがさらに短縮され、製造時も環境への負荷が軽減する。
次代を担う子供たちへの環境教育の一環として、この最も進んだ太陽電池を使った太陽光発電システムを「そらべあ発電所」として幼稚園や保育園に贈ろうというプロジェクトがある。地球温暖化防止のため、グリーン電力の普及啓発などを行っているNPO法人「そらべあ基金」が手掛ける「そらべあスマイルプロジェクト」だ。
ホッキョクグマ兄弟のキャラクター「そらべあ」をシンボルに、活動している同基金。今年はソニー(東京都港区)が乾電池の売り上げの一部などを充てて、全国3カ所の幼稚園・保育園に3キロワットの「CIGS薄膜太陽電池」を使った「そらべあ発電所」が設置された。設置園の一つである東江幼稚園(東京都葛飾区)の浅井正信園長は「設置した棟の電気はほぼ賄っている。発電量がひと目で分かる画面を園児に見せるなど環境教育にも活用している」と話している。
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☆住宅用太陽光発電システムの助成制度(抜粋)☆
福島県 助成制度がある市町村の住民に1キロワットあたり最大3万円(上限4キロワット)
東京都 3キロワットで30万円程度(09年度から)
和歌山県 1キロワットあたり2万5000円(上限5キロワット)
佐賀県 同1万5000円(同4キロワット)
北海道帯広市 設置費用の2分の1(同15万円)
長野市 1キロワットあたり3万円(同20万円)
松山市 同8万円(同5キロワット)など
広島県呉市 同2万円(同4キロワット)
鹿児島市 同4万5000円(同3キロワット)
毎日新聞 2008年12月17日 東京朝刊